今年の発表会は、豪華なホールで気持ちの良い空間を満喫でき、出演者の演奏も彩り豊かで、大盛会となりました。大人数で長丁場となりましたが、客席も居心地が良く、出演者様のご関係でないお客様から「とても感動的で全く飽きることなく聴き入ってしまいました」というご感想も頂けました。本当に有難い事です。

皆様それぞれに素晴らしいドラマが生まれましたが、特に印象的なひとこまをご紹介します。

なかなか自分自身を解放できずにお行儀良い演奏に留まっていたS君、子供らしい豊かな表情を見せ、舞台裏では楽しそうにステップを踏み・・・本来の持ち味をやっと表しました。
テクニックレベルも非常に高く、とても上手に弾けるのに、これまでは笑顔も少なく、全ての課題を淡々とこなし、質問にも優等生的な無難な返答ばかりでした。
本番直前になって、個性溢れる素晴らしい音色を紡ぎだせるようになりました。屈託のないはじけるような笑顔も見せてくれました。持ち味が出た演奏は、やはりとても魅力的でした。

本番前の舞台上での注意事項確認時に、Mちゃんが手を挙げて「先生!舞台が広くて後ろがたくさん余っています。無駄になっちゃいますがどうしますか?」と元気に質問。
いやいや、どう仕様もないのですが、自分の目の前に置かれた状況に一生懸命になる余り、心の余裕がなくなりやすい傾向があるMちゃんが「空間を意識した」という大チャンス!
空間も楽器として、、、という大人に説明するような事を話してもつまらない。
「じゃあ、踊ろうか!」と声を掛けたら、Mちゃんを含めバレエも習っている生徒達が歓声を上げ、満面の笑みで踊り始めました。
「シャッセ・ソッテ・シャッセ・ソッテ・・・」「トンベ・パドブレ・ピルエット・・・」
気持ち良さそうに空間を味わっていました。本番の演奏も、空間への意識がプラスに働き、実に伸びやかでした。

本番当日の練習室にて。
事前に行ったピアノスタジオでのリハーサルに、高熱のために参加できなかった年中さんのK君。
たくさんの人が行き来する初めての環境に驚き、顔面蒼白で石膏のように固まり、頷く事も会話する事も出来なくなってしまい、お母様はパニック状態に。
ゆっくりソファに腰かけてもらい、開催準備に追われる合間に様子を見に何度も往復。やっと頷く事だけはできるようになった時、手を取って弾かせてあげましたが、まだ魂の抜け殻状態。
その後少しずつ魂が戻って来て、本番はしっかり演奏できました。
本番後は、舞台裏で何度も発表会ごっこを繰り返し、大喜び。
幼いながらに、やり遂げた達成感を味わった様子です。

とても頭も良くしっかり者のHちゃん。
普段からレッスンの内容をしっかり理解して、正しく練習し、1回1回のレッスンで確実に進歩をしていきます。
一つ一つをしっかりこなす、という優れた要素の反面、フレーズ1つ1つで段落がついてしまう、という傾向がありました。
今回は、音楽全体を大きな視野で捉え、表現の幅も自在で流れも良く、テクニックも高いレベルで、まさに絶品!と思える素晴らしい演奏を披露しました。
コンクールとは違った和気藹々とした雰囲気と、素晴らしいホールの空間が、栄養になった様子です。

音楽的感性が豊かで、じっくりと落ち着いて音色を味わうMちゃん。
細かいパッセージでどうしても力みが抜けず、絡まってしまう箇所がありました。
手をぶらぶら振ってあげたら、とても弾きやすくなりましたので、今回も本番前にぶらぶらぶらぶら、たくさん振ってあげました。
見事な音色で流れるような美しさとなり、例の細かいパッセージもスムーズで淀みなく演奏できました。
「緊張して何もわからなくなっていたのに、手が勝手に弾いてくれた。」と、ビックリした表情で興奮気味に語ってくれました。

まだまだ続きます・・・