今日、勤務先の高校で、ピアノの個人レッスンでも担当している生徒が楽典の授業後に質問にきました。

今まで、あまり自分の日々の練習や勉学に真剣に取り組んではいなかった彼女、でも今日は何か決心をした様子が窺えます。
顔はにこやかでしたが、一生懸命笑顔を作っている様子で、どうやら真剣に悩んでいるらしい・・・

話を聞いてみると、毎日きちんと練習すると心に決めて、1週間、ピアノを30分、専攻楽器を60分、そして勉強もすると計画を立てて実践してみたそうです。
でも、全く練習の成果が上がらない、やっても上達出来ない、といって、涙がこぼれてました。
専攻楽器の先生に、練習してないんでしょ、と言われてしまった、という。

音大を受けたい生徒が一日にたったの90分の練習?少ないのでは?
と思われるかもしれませんが、
朝練に放課後に、休日も返上の忙しい部活動をやりながらなので、
相当に気合がなければ毎日90分を確保する事は出来ないと思います。
遊びたい気持ち、休みたい気持ちに打ち克って、真剣に頑張ったのだと思います。偉い偉い!!!

必ず原因がある筈、と伝え、個人レッスンの時に普段の練習の内容を確認する事を約束し、休み時間が終わりました。

さて、例の彼女のレッスン時間になりました。
普段の練習の、30分の内訳を聞きました。
まず、ゆっくりの練習を、部分にわけて何度もやった、と言う。
そのゆっくりの練習を、やって見せてもらいました。

すると、打鍵は浅くて空滑り。
両手の同時になる瞬間にも意識が届かず、ばらけていたりバランスが悪かったり。
止まったり弾き直したり、速くなったり遅くなったり、指使いは弾く度に異なり・・・
焦りや気負い、心配からか、落ち着いた練習が出来ていませんでした。

確かにゆっくりの練習で回数もこなしていた様子ですが、これでは当然成果が上がりません。

打鍵の感触をしっかり味わい、音色もしっかり聞きとり、
次になる音色も頭でしっかりイメージをしてから弾く。
最適と思われる指使いを決めて必ずその指を使い、
最も自然なフォームで脱力をして次の打鍵の準備をしてから弾く。
弾き直しをするのは、まだ準備が出来てないで弾いている証拠。
確実な準備が出来るテンポまで遅くして、良い音色で、良いバランスで、
現段階でイメージできる分だけで構わないので、やりたい表現もしながら、フレーズと共に呼吸をする。
時間のコントロールをしっかり行い、気が抜けたり指の都合による乱れやテンポの崩れは許さない。

これを徹底していくと、3回も弾けば、たった僅かな時間でも確実な進歩が実感できました。

練習とは、正しい事を身体に教えていく事です。
間違いをたくさん弾くと、間違いを身体は習得してしまいます。
深く呼吸をし、落ち着いて取り組む事も大切です。
焦ると呼吸は浅くなり、身体も硬くなり、頭と身体の連携が悪くなります。

ただ、徹底する事は、想像を超えて難しいものです。
レッスン中、僅かな不具合も許さず徹底する事を要求し、真剣に監視をしていても、
やはり何処かが行き届かずミスをしたり、いい加減な指使いをしてしまったり、
テンポが崩れたりしてしまう。数回弾いても、「これで良いから、この内容で繰り返して!」という状態になるのは、たった1回位でした。

確実な練習には、厳しい追及と強い意志、我慢と根気が必要です。
ですが、徹底したら進化は早い早い!

練習内容がほぼ全てを決めていきます。
さて、進歩に繋がらない無駄な練習は止めて、うまくなる為の良い練習に時間を使いましょう。